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トップ>成年後見制度/2.認知症について




  (1)認知症と物忘れ
  (2)認知症の原因となる主な病気
  (3)認知症高齢者の介護について
  (4)認知症患者の立場から
  (5)認知症高齢者の自動車運転
  (6)軽度認知障害
  (7)エビングハウスの忘却曲線



脳の老化に伴う「物忘れ(健忘)」は当たり前の生理的現象であって、それだけで病気とはいわない。物忘れを中心とした記憶や判断力などの障害が起き、脳や体の疾患を原因として日常生活にまで支障をきたすようになった状態を「認知症」という。

生理的な物忘れでは体験したことの内容を忘れることがあっても、体験したこと自体は覚えているものですが、認知症の場合は体験したこと自体を忘れてしまいます。今朝食べた「もの」を忘れるのではなく、食べた「こと」さえも覚えていない。一度獲得した知的機能が低下し、自己や周囲の状況把握・判断が不正確になり、自立した生活が困難になる生活障害ですから、これは知的障害ではありません。脳機能の低下と共に感情障害或いは人格障害を伴う病態を認知症と言っています。

認知症は徐々に進行するので、いきなり全てを忘れるというものではない。85歳以上の高齢者の4人に1人以上は認知症ですから、誰もが直面する可能性がある非常に身近な病気です。認知症患者は全国で462万人(2012年統計)いるとされます(2025年予想値は700万人)。認知症はその原因や病態によってアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病などという病名がつきます。


記憶とは海馬という「記憶の壺」に保存された情報のようなもので、この壺に外部の情報を取り入れて保存するが、正常な老化の場合、情報を取り入れる能力が衰え時間が掛かるところ、認知症になると、新たな情報を取り込むことが出来なくなり、更に進行すると、壺自体が崩壊し、その中に保存していた情報が漏れて失ってしまう。すると「リボの法則」(Ribo's law)としてフランスの心理学者が唱えている記憶の逆行性喪失という現象が起き、壺の中の情報が現在から過去に遡って順次失われてしまう。最近覚えた記憶から順に忘れていくが、壺の奥に保存された古い記憶だけは最後まで残る。若かった頃の記憶はしっかりあるのに今朝飲んだ薬のことをすっかり忘れまた薬を飲もうとするのはそのためだ。記憶情報の消失については、体験で習得された情報よりも知的に得られた情報の方が早くなくなるという特徴も知られている。

「痴呆」という表現は知的障害という誤解を招くことから2004年の厚労省老健局長通知により「認知症」という用語に変更され、早期発見・早期診断により症状を緩和し、進行を抑えることができる「体の病気」であることが広く知られてきました。医学界でこの難病の研究は続いていますが、消失した脳細胞は絶対に再生しないというところに治療の難しさがある。一度脳が縮小を始めてしまうとその流れは不可逆で機能を通常まで回復させることは今のところ不可能と言われる。加齢を止めることができない私たち皆の共通の問題でもあるので、できる範囲で予防するしかありません。認知症になると正常な人の3倍のスピードで老化が進行し、結果的に一定期間後の死亡率が3倍になるとのある医大教授の報告もあります。


(a) 認知症の中核症状(Core Symptoms)
記憶障害、記銘障害、見当識障害、実行機能障害、理解力・判断力の低下・失語・失行・失認など認知症患者に必ず認められるもので、病気の経過により徐々に進行していく。

記憶障害:
記憶を保存することができない。普通、記憶は時間の経過と共に薄れ、忘れるものですが、認知症になると「リボの法則」といって新しい記憶ほど忘れられ、古い記憶は保持される。初期の段階では昔の記憶は残っていて新しいことが覚えられなくなるだけだが、進行すると古い記憶もなくなっていく。

記銘障害:
新しいことを記憶することができない

見当識障害:
現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握できなくなること。時間や季節感の感覚が薄れるので何回も今日は何日かときいたり、季節感のない服を着たりする。場所の感覚がなくなり近所で迷子になったり自宅のお手洗いの場所が分からなくなったりする。到底歩いて行けそうにない距離を徒歩で出かけようとしたりする。人間関係についてはとっくに亡くなった母親が心配しているからと、遠く離れた郷里の実家に徒歩で帰ろうとするなど。

理解力・判断力の低下:
思考の速度が遅くなる。筋道を立てて考えられなくなる。観念的な事柄と現実的・具体的な事柄が結び付かなくなり、「倹約は大切」と言葉で分かっていながら一方で高価な羽毛布団をいくつも買ってしまう。予想外の出来事で混乱する。

実行機能障害:
計画を立てたり手順を考えたりすることができない。夕食の食材を買い物に行ってその日の献立に必要な食材と冷蔵庫にある食材が結び付かず必要のないものまで買ってしまう。手順を考えながら料理を作ることができない。ご飯を炊きながら同時におかずを作ることができない。

失語:
言葉が出てこない。言葉の意味を理解できない。ものの名称が分からない。

失行:
構成失行(瓶に蓋をする等の立体的動作ができない)着衣失行(袖に腕を通すことが理解できない、ボタンをボタン穴に合わすことができない)観念失行(言葉で指示されただけでは行動できない、道具を使うことができない)、観念運動失行(髪をとかすなどの動作ができない)

失認:
時計の針が読めない。身の回りの物の用途が分からなくなる。(鍋やまな板など知っているはずの物の使い道が分からない)


(b)
認知症の周辺症状(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia=行動心理症状)
中核症状に起因する精神症状・行動障害を周辺症状といい、妄想・幻覚・不安・睡眠障害・不潔行為・徘徊・暴力などがある。安心して生活できる環境の整備、介護者の対応の仕方の工夫、或いは向精神薬・抗不安薬・睡眠薬・漢方薬の抑肝散などで軽くすることができる。行動障害はその不安や戸惑いが呼び起こす思いを相手に伝えるためのメッセージでもあるから、ケアを担う人がその行動の背後のメッセージを理解してあげると行動障害でなくなる。


(c) 認知症高齢者の日常生活自立度ランク
高齢者の認知症の程度とそれによる日常生活の自立度を客観的に把握するため、介護保険制度の要介護認定とか医療福祉現場で使用されている指標。2010年末時点の全国の認知症高齢者の数はランクT以上で約241万人、ランクU以上で約208万人、ランクV以上で約111万人。(厚労省老健局高齢者支援課資料、但し介護保険を利用していない認知症高齢者の数は含まず)
rank 判定基準(平成5年10月26日付厚生労働省老人保健福祉局長通知)
T 何らかの痴呆を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している
U 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる
V 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが時々見られ、介護を必要とする
W 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする
X 著しい精神症状や問題行動或いは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする(意思疎通が全くできない、或いは全くの寝たきり状態の場合を含む)
なお日常生活自立度U以上の高齢者人数(2010年=208万人は2025年=323万人、2040年=385万人に増えると予想されている)

(d) 認知症高齢者の年齢別出現率と人数
 年齢   認知症出現率   2009年統計 
65-69 1.50% 79万人
70-74 3.60%
75-79 7.10%
80-84 14.60% 62万人
85〜 27.30% 100万人
85歳以上の高齢者の4人に1人以上は認知症です。(内約半数は在宅)


(e) 専門医療機関の探し方
認知症の専門医がいる「認知症疾患センター」「認知症外来」や「もの忘れ外来」を受診するのがベストですが、それが近くにない場合は、精神科、神経科、老年科、心療内科、神経内科、脳神経外科などで認知症の専門医がいるか問い合わせるといいでしょう。地域の保健所、保健センター、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、市区町村高齢福祉担当課等などに問い合わせて、最寄りの認知症疾患センターを調べることができます。
この病気は、より身近な人に対して症状がより強く出る傾向があり、介護者にはひどい認知症の症状を示しても、医師や看護師に対してはしっかりした対応をすることがあって、診察を受けて「異常ない」と言われたりします。医師が正確に病状を判断することができるように、認知症の人の生活歴、病状経過、主な症状などを、予めまとめたメモを診察前に医師に見てもらうと正確な診断につながります。

(f) 認知症の判定基準
一般的に「改定長谷川式簡易知能評価スケール」(1991年HDS−R)又はMMSE(Mini-Mental State Examination)が使われます。HDS−Rは30点満点で21点以上を正常(認知症でない)と判定します。20点以下は認知症の疑いあり。更に、軽度19.10±5.04、中等度15.43±3.68、やや高度10.23±5.40、非常に高度4.04±2.62と分類されています。HDS−Rは以下の設問9個から成っています。

お歳はいくつですか(年齢)
今日は何年の何月何日何曜日ですか(日時の見当識)
私たちが今いる所はどこですか(場所の見当識)
これから言う3つの言葉を言ってみて、後でもう一度言ってもらいます(言葉の記銘)
100から7を順番に引いていってください(計算問題)
これから言う数字を逆から言ってください(数字の逆唱)
3つの言葉(例えば桜・猫・電車)を言ってもらい、後で覚えているか言ってもらう(言葉の遅延再生)
5つの品物を見せてから隠し、それが何だったか言ってもらう(物品記銘)
知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください(言葉の流暢性)
MMSE(30点満点)の場合、質問事項は変わり、27~30点は異常なし、22~26点は軽度認知症の疑いあり、21以下は、どちらかというと認知症の疑いが強いと判定するようです。

(g) 若年性認知症
64才以下の働き盛りの世代で認知症の症状が出る場合がある。これは若年性認知症といって、老人性認知症(65才以上)と区別される。現在の推定患者数は38,000〜80,000人。認知症の原因となる主な病気は老人性認知症の場合と共通だが、それ以外に脳腫瘍後遺症、頭部外傷、薬物・アルコール依存症などを原因とするもののほか、遺伝子が関係している場合もあると言われる。

若年性認知症は進行を遅らすことが肝要で、そのため早期診断・早期発見が最重要だ。初期症状は極端なもの忘れ、この段階では、家族も本人も気づくので、一度心療内科、神経内科、脳神経外科などで、認知症専門医に診てもらい、若年性認知症と診断されれば、医者は対処方法を指示してくれる。家族の協力、地域社会の協力も必要になる。社会の中で自分の役割を見つけ、規則正しい生活、適度な運動などをすることによって、若年性認知症の進行を止めた人もたくさんいる。

働き盛りで働けなくなった場合の保障には、傷病手当金(最長18ヵ月)、障害年金(障害2級相当)などがある。



圧倒的に多いのはアルツハイマー型認知症(40%〜50%)、脳血管性認知症(20%〜30%)、レビー小体型認知症(10%〜15%)ですが、他に、ピック病(前頭側頭型認知症、5%)、特発性正常圧水頭症、パーキンソン病、クロイツフェルト・ヤコプ病など多岐にわたります。


(a) Alzheimer型認知症(Senile Dementia with Alzheimer Type)
認知症の約半数を占めるのが(老年性)アルツハイマー型認知症で、特に75歳以上の女性に多い脳変性疾患(男女比約1:2で女性が多い)。脳の神経細胞は誰でも加齢とともに減るものだが、アルツハイマー型認知症患者の脳では特殊な蛋白質異常から神経細胞が壊れ、脳が急激に萎縮し神経細胞が失われていく。脳全体にβアミロイド(βamyloid)とタウ蛋白質(Tau protein)という異常な蛋白質が蓄積すると更に神経細胞が死滅し、脳の働きを低下させ、脳幹委縮が進行、発症に至る。アルツハイマー型認知症患者の脳では比較的早い段階から老人斑(アミロイド斑)と呼ばれる変性神経細胞(茶色いシミ)が多く確認されている。

海馬という記憶の中枢から始まるため、近時記憶障害(新しいことが学習できない、ごく最近の出来事が想い出せない)の症状で気づかれることが多い。次第に知能・身体全体の機能が衰え、時間・場所・人の見当がつかない見当識障害、空間的な位置関係の把握が悪くなる視空間認知障害などが加わる。ニューロン・シナプス(neuron synapse)という神経細胞の継ぎ目が脱落して自律神経が停止すると死に至る。二次性の呼吸器合併症で死亡することもある。遺伝性とは証明されていない。なお40歳代後半から65歳未満に発症する若年性アルツハイマー病(Familial Alzheimer's Disease)は遺伝性という報告もあるが、この病気になる人の割合は数パーセントと言われている。

経過期間 アルツハイマー型認知症の段階的周辺症状
第1期
(1〜3年)
健忘(記銘力低下=記憶することが困難になる)
人格は保たれ、ニコニコして愛想はよい
第2期
(2〜10年)
顕著な記憶障害、会話が成立しない
構成失行、着衣失行、観念失行、観念運動失行、視空間失認(空間の配置を正しく理解できないため扉を認識しても部屋から出られないと言ったりする)
地誌的見当識障害(外出すると家に帰れなくなる)、徘徊、判断力障害
人物誤認、無関心、無欲、周囲に無頓着、落ち着きのなさ、怒りっぽくなる
第3期
(8〜12年)
失外套症候群(apallic syndrome 目は動かすが身動き一つせず言葉も発しない植物状態)
寝たきり、人格が変わる

女性に多い理由として、鉄分不足になりやすい女性が酸性化された土壌で育つ野菜に溶け込んでいるアルミニウムイオンを血管内に取り込み、それが脳に蓄積されたからという説がある。アルツアイマー型認知症患者の脳内のアルミニウム濃度が高いという研究結果に基づくという。

アルツアイマー型認知症は、早期発見・早期治療により症状を軽減したり、進行を遅らせたりすることができる。発症初期の段階であれば、エーザイ(株)の「アリセプト」(塩酸ドネペジル)といいう薬を服用することにより高度機能障害はある程度くい止める、又は病気の進行を緩やかにする(最大でおよそ10ケ月進行を遅らせる)ことができるといわれている。但し、この薬も病気が進行すると効果はないので、早期発見が重要だ。

タウやβアミロイドは、発症の20年以上前から集積が始まる。画像検査で血液中の微量なβアミロイドに関連する蛋白質「ペプチド(peptide)」を高精度で検出して初期のアルツハイマー型認知症を早期診断する血液バイオマーカー検査が近い将来実用化する見通しだ(2025年前後か)。アミロイドPET検査による画像でもβアミロイドの蓄積状況を確認することができるので、血液検査とPET検査により早期発見が実現すると思われる。

*2020年10月、九州大学などの研究チームによると、歯周病菌が血管を通じて体内に侵入することでβアミロイドを脳内に蓄積することが判明、βアミロイドを運ぶ受容体の働きを阻害する薬剤を使うと、感染した細胞内を通るβアミロイドの量を大幅に減らせることも確認できたという。歯周病の治療や予防で、アルツハイマー型認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある。

*2023年1月、米国食品医薬局(FDA)は、エーザイ(株)と米国Biogen共同開発のLecanemab(レカネマブ)という新薬を承認した。アミロイドβの沈着を抑制し、臨床試験結果では症状の悪化速度を27%抑制する効果があると認められた。但し、初期段階のアルツハイマー型認知症にしか効かず、年間の薬剤費はUS$26,500(約350万円)という。Medicareという高齢者向け公的医療保険が適用されるようになると一日当たりUS14.50(約1,900円)になる。日本でも近々申請する段階だ。

(b) 脳血管性認知症(Vascular Dementia)
脳梗塞(脳神経細胞に酸素や栄養を運んでいる血管が詰まる)や脳内出血(血管が破裂する)など、脳細胞に充分な血液が送れなくなり、神経細胞が死ぬことによって引き起こされる認知症が脳血管性認知症で、特に60才代以降の男性に多い。脳梗塞や脳出血が起こるたびに階段状に悪化していくので、アルツハイマー病などゆっくりと進行する脳の変性による病気と異なる。動脈硬化の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、多量の飲酒、喫煙など)を持っている人に多く、これらの因子を内科的にきちんと管理したり生活習慣を改善したりすることが予防につながる。

著しい発動性の低下・無関心が認められるが人格は保たれる場合が多い。活動の低下によって生じる廃用症候群(刺激が少なくなることによる精神活動の減退)は、認知症を更に悪化させるので注意が必要。早期に発見し、デイサービスなどの社会資源を利用し、活動性を上げる必要がある。囲碁・将棋・英会話など脳を活性化する活動をすると進行を遅らせる効果があると言われる。
既に起こってしまった血管や脳細胞の変化を元に戻すことは難しいが、進行を予防するために血管を拡張させたり血液が固まるのを抑えたりする薬が使われる。アルツハイマー型と脳血管性認知症とでは症状の出方が異なり、生活上の注意点や治療法も変わってくる。発症から数年で死亡するとも言われている。


(c) レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies)
一種のタンパク質からなる異常な「レビー小体、Lewy bodies」が大脳皮質にたくさん現れ、神経細胞を壊していく病気で、これを発見した医者Lewyに因んでレビー小体型認知症と名づけられた。表情が硬く、注意力が低下して、動きが鈍くなる。ぼんやりとした表情で目はトロンとし、問いかけに対してもテキパキと答えられない。調子の波が極めて大きいのが特徴で、状態の良い時は認知症の存在を疑う程しっかりしているが、これが同じ人かと疑いたくなるほど悪くなる時がある。また先程まで家族と普通に話していた人が、次の瞬間には家族がわからなくなったりする。

アルツハイマーのような認知障害及びパーキンソン病のような運動障害(手足の震え、体の固さ、動きの鈍さ、歩行障害など)の両方が症状として現れる。記憶障害に加えて、初期段階から幻視(実在しない人や動物などがありありと見える)や錯視(床に落ちているゴミを人や動物、虫などに見まちがう)、妄想(既に亡くなっている家族が「家の中にいる」と言う)を起こしやすい。

診断が難しいようで、アルツハイマー・パーキンソン・うつ病などと誤診されやすいが、薬物に過剰に反応する特徴があり、アルツハイマーやパーキンソンの治療薬を通常量で投与すると逆に症状の悪化を招く。早い段階で正しい診断をしてもらい適切な治療をすることで進行を遅らせ症状を改善する効果が期待できる。適切な治療をしない場合、症状は速く悪化し、アルツハイマーに比べて10倍の速さで寝たきりになるといわれる。レビー小体病による物忘れはアセチルコリン(Acetylcholine)の低下が関与しているため、これを増加させる治療を行うようだ。有効な漢方薬もある。男女比率は2:1で男性に多い。


(d) ピック病(前頭葉・側頭葉型認知症、Pick's Disease)
働き盛りの40〜60歳代に多い若年性認知症の一種で、高度な判断や注意を集中させる働きを担う脳の前頭葉や、記憶中枢のある側頭葉にかけての部位が萎縮して、性格の変化や理解不能な行動を特徴とする脳萎縮性疾患。神経細胞内にピック球(Arnold Pickが発見した)が現れるのでピック病という。脳内にタウ蛋白質(Tau protein)が異常蓄積されて発症するので、PET画像化実現により早期発見や治療薬の開発促進が期待される。

アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体病に次いで多く、これらを四大認知症という。前頭葉の委縮が先に始まる場合は、人格変化(他人の気持ちに配慮できない、社会のルールを守ろうとしない)、社会的逸脱行為(反社会的行動、理解不能な異常行動)、滞続症状(意味もなく同じ内容の言葉を繰り返したり同じ行動を繰り返す)などが目立ち、側頭葉の委縮が先に始まる場合は、言語障害や記憶障害などが目立つ。
前頭葉は人間が人間として生きるために最も重要な部位とされるが、その欠落により判断力が失われ、抑制が利かない状態になったりする。前頭葉の欠落が引き起こす人格変化には、例えば、真面目で今まで一生懸命仕事をしてきた人が、ある時突然万引きをするとか、スコップを振りかざして人を追いかけるなど社会的問題・暴力沙汰を起こすなどということがある。

PETなどの最先端画像診断を行わなければ正しく診断できる医師は少ないようだ。脳血流を活発にする栄養補給や適切な治療によって進行を遅らせることはできるというが、決定的な治療法はないらしい。介護が一番難しい認知症といわれ、ありすの杜のような専門施設に頼るのが一番効果的だ。男女ともほぼ同じ確率で罹患し、発病から2−8年くらいで衰弱し死亡することが多いという。


(e) 特発性正常圧水頭症(INPH=Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)
国内の患者数6-8万人といわれる。特定疾患に指定されている難病だったが手術で治療できるようになった。くも膜下出血、頭部外傷等を原因とする続発性正常圧水頭症とは異なり、原因不明の特発性正常圧水頭症では脳室が拡大し、余分な脳脊髄液が徐々にたまっていく病気で、歩行障害・認知症・尿失禁を三大徴候とする。これらの症状が3〜4ヵ月のうちに悪くなり、放置すると寝たきりになる。
CT、MRIなどによる断層画像診断で脳室の拡大が確認でき、更に脳脊髄液循環障害の検査により特発性正常圧水頭症と判定されると、脳神経外科で脳脊髄液の流れをよくするためのバイパス手術(髄液シャント術)を行う。80%以上の確率で正常圧水頭症は治り、認知症などの症状もなくなる。従来のバイパス手術は頭蓋骨に小さな穴をあけて脳室カテーテルを挿入するやり方だったが最近は頭部の外科手術をしない腰椎−腹腔シャント術という負担の少ない手術方法が開発されています。

(f) パーキンソン病(Parkinson's disease)
ドーパミンニューロンが極端に死滅・減少してドーパミンの生産が少なくなる突発性神経変性疾患で、運動症状と非運動症状が現れる。運動症状としては手足のふるえ、固縮(筋肉のこわばり)、無動(動きが乏しくなる)、バランスの悪さなどがある。非運動症状として無表情が典型的だが、約40%の割合で認知症を合併するとされる。ドーパミンニューロンの減少は加齢によるため、高齢になれば誰でもパーキンソン病になる可能性はある。幸いにして近年の治療の進歩が著しく、一般には天寿を全うできる病気とされる。非遺伝性。

50-65才で発症、国内患者数約15-20万人。ドーパミンを補充する「L -ドーパ」、ドーパミンの働きを補う「ドーパミンアゴニスト製剤」のほか、最近、アデノシンの働きを抑制し、減少したドーパミンとのバランスを回復させて運動機能を改善させる「イストラデフィリン(istradefylline)」(協和発酵キリン商品名「ノウリアスト」)を併用するとより効果があると発表された。(2013年5月発売)


(g) クロイツフェルト・ヤコプ病(Creutzfeld Yakob disease)
異常化した蛋白質プリオン(感染性因子)が脳内に侵入し、脳組織に海綿状の空腔をつくって脳機能障害を引き起こす感染性疾患で、感染後長い潜伏期間を経て発病する。一般的には初老期に発病し、発病初期から運動麻痺(歩行障害)や認知症状、視力障害などが現れ、数ヶ月以内に認知症状が急速に進行する。発病から半年以内に自発運動はほとんどなくなり、最終的には無動性無言状態(寝たきり)に陥って、1〜2年以内に全身衰弱、植物状態、死に至ることが多い。狂牛病(BSE)に感染した牛の肉を食べた人が異変型クロイツフェルト・ヤコプ病になった症例も知られている。この病気の治療法はまだなさそうだ。



Person-centered careといって、その人を中心としたケアを心がけるのが基本です。認知症の人の形成している世界を理解し、その人の世界と現実とのギャップを感じさせないように心がけましょう。そして認知症扱いをしないことです。要介護者の自尊心・プライドを傷つけるようなことは決してしてはいけません。自尊心を傷つけてしまうと攻撃的になったり内向的になったりより症状が悪化したりします。まずは優しく、温かい気持ちで本人の言い分を聞いてあげることです。

本人の言いたいことは判っているからと、介護者・サポーターが代弁するのは、本人が言おうとしている意欲を失わせ本人をより落胆させることになるので要注意です。認知症の人は脳の回転が遅くなっているので、ちょっと待ってあげるか手助けをしてあげることで言葉が出てくる場合があります。介護者は患者本人の思いを引き出すことが大事で、本人の発言する意欲を駆り立ててあげることが肝要です。「介護」より「寄添い」、「サポーター」より「ケアパートナー」と理解しましょう。

記憶力・判断力が低下していますから、失敗をしても、周りは、それを否定せず、受け入れるようにしましょう。子供にはしつけが必要ですが、成長を遂げた人間が脳の疾患によって、能力が後天的に低下したところで、今まで長年生きてきた証・人格は保たれているのですから、認知症高齢者に「しつけ」は無意味です。彼らはある意味では虚構の世界で生きており、直感や感性で判断するため理屈や損得が通用しないことがあります。できること、残っている機能を大切にし、何とか説得し、納得してもらって、その気にさせながら訓練して、維持・向上を図る必要があります。結局、人生の大先輩に対して、我々は敬意を示して接すべきなのです。

おむつの使用がスムースに行かない場合は地域包括支援センターなどで「オムツフィッター」を紹介してもらうと割とうまく行くことがあります。種類やサイズが合っていないという問題だけでなく、医療や住環境、適切な福祉用具な ど、幅広い視点から、症状の把握をした上で適切なアドバイスやモノを提案してくれます。

一人だけで何もかも背負って頑張る必要はなく、みんなで助け合って、あまり頑張らない介護をしたほうがいいでしょう。力仕事をヘルパーさんにお願いするとか、デイサービスを有効に利用するなどして無理をしないことが長続きのこつです。デイサービスを嫌がる人に対しては、元気で長生きしたかったら健康な生活に役立ち、病気の進行も遅らせるからとじっくりすすめることです。近所に知られるのが嫌だから乗り気でないという場合は通所マークなしの普通車で送迎してくれたりもします。但し、無理強いをしてはいけません。家事なども頑張らずできるだけ手抜きして、介護負担感を軽減し、空いた時間を休息や楽しみにあて、気力を養うといいでしょう。介護をする家族は見守りと自分の生活とで二重のストレスを負っているので、介護から解放される時間を確保するのが必要です。介護で疲れたこととか自分の気持ちを話す友達やサークル仲間のような、理解し共感しあえる「心のご近所」がいれば助けあって介護が続けられるものです。

介護付有料老人ホームは入居一時金のほか月額20万〜30万円ぐらいかかるとみておく必要があります。

予防認知症対応デイサービス = 認知症である要支援者を介護予防を目的として老人デイサービスセンター等に通わせ介護その他の日常生活上の支援や機能訓練を行うサービス

認知症対応デイサービス = 認知症である要介護者を老人デイサービスセンター等に通わせ介護その他の日常生活上必要な世話や機能訓練を行うサービス



目指すべきは早期診断・早期発見・早期治療。本人がまだ先生の発言や病気のことに対して正常な判断ができる間に診断を受けるのが理想的です。専門用語を分かりやすく説明してもらって納得できるようでなければ正しい治療が受けられない。よくある誤診も要注意だ。最初、神経内科・精神内科で受診し、結果は、「異常ない」と言われた人が、半年後別の病院でMRI・問診・髄液検査を受けて、アルツハイマー病と診断されたとか、最初の病院でうつ病と診断され、数年後に別の病院でアルツハイマー病と診断されたという例もきく。誤診されるとその間の時間的・金銭的無駄が非常に多いばかりか、効かない薬を投与され、副作用で余計身体を壊す。本人・家族が診断結果に納得できない場合は、セカンド・サードオピニオンを追及して行くべきです。大原則は、患者が本人であり、主人であることを忘れないことでしょう。
「認知症の人には学習能力がない」と決めつけるのは間違いです。学習に挑戦する根気・気力を持ち続けるのは生易しいことではないが、まずは日常生活において自分の現時点での能力以下のレベルの問題に対して取り組むようにして少々自信をつける。それから徐々に能力以上の高い問題に対して取り組む試みをするとよい。経験者の話によれば、その際、ハードルの高さを1/5程度にし、且つ5段階の階段状の坂道を設定して、その一段一段に取り組むようにする。以前はできたのになあと悔しがるしか仕方がないが、そういう病気なのだからと納得し、継続することでやっと1/5のハードルをクリアできれば儲けもんと思う。

あとは何とかして残りの4つのハードルを一段ずつクリアすることに挑戦する。もちろん大変な努力だが、他の人の助けも借りてついに5/5全てのハードルを乗り越えることができたという。こうすることにより自分の達成感が得られ、新たなチャレンジ精神につながるといいます。一番難しいのは根気・気力を持ち続けることですが、それができれば生きがいのある日常生活が送れるようです。計算ドリル・散歩ジョギングなどをするのも効果的ですし、気の合った仲間と男性料理教室で一緒に作るなどでも脳を刺激して認知症の進行を防止します。

認知症の人が生きる意欲を持つことができるのは自分の居場所があること、自分がその場にいていいんだと認識できる場所があること、それは周りの人に自分の存在を認めてもらうことでもあります。認知症になると、何もわからなくなるのではなく、喜怒哀楽などの感情は残っています。認知症は脳が病的に変化することで記憶したり、認識したり、物事を理解・判断したりするなどの知的機能が低下する「体の病気」であって、「心の病気」ではありません。記憶、認知、理解・判断する知的能力は確かに低下しますが、感情やその人らしさは変わらずに残ります。「どうせ何も分かりゃしないだろう」的な接し方をされると、内心「毎日ワシを愚弄しおって」と感じるものです。健常者なら「不愉快な態度はやめなさい」と言葉で表現できますが、それができないために、暴言や暴力という問題行動に表れるのです。

認知症の本人は周囲に迷惑をかけていること、又自分がどう見られているかをしっかり感じ取っています。昔のように自由に思いを表現できないもどかしさを一番強く感じています。ままにならない自分の体にもどかしさを感じているからこそ、周りの人との協調性を保つ余裕がなくなり、自分に不利なことは認めたがらない性格(「自己有利の法則」という)が前面に出てしまうようです。周囲の人が認知症に対する正しい知識を持って接してくれれば、彼らから元気をもらって本人の症状の進行を防止することにもなるのです。



大雑把な推計のようですが、認知症患者の運転免許保有者数は国内で30万人以上とされています。認知症により自動車を適切かつ安全に運転できないと判断される人はおよそ次のような行動を取ることが多いといわれています。

(a) 行き先を忘れる、迷子・行方不明になる
(b) 車庫入れ・バック等で車をこする
(c) 車間距離をとらない、わき見運転をする
(d) 信号無視
(e) 運転をやめたこと自体を忘れて運転する

認知症高齢者による事故率は同年齢の健常者に比較して3-4倍高いという統計もあるように、その危険性は大幅に増加します。道路交通法第90条1項一の二号及び第103条1項一の二号に規定される「認知症」とは介護保険法第8条16項の定義を使い、『脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化(組織や細胞が、元の形態に戻らない)により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態』を指します。認知症の本人は病気の自覚がなく認知症と認知していないので、交通事故の危険性も認識していません。従い、成年後見・保佐審判開始決定に関係なく、認知症であると判明した時には、交通の安全のため免許は取消しとなるか、停止されることになります。(運転者が認知症で、回復する見込みがない場合に運転免許が取消され、運転者が認知症であっても、6ヶ月以内に認知症から回復する見込みがある場合には、回復が認められるまでの間、免許の効力が停止される)運転継続が可能かどうかについて、調べる必要がある場合には、近くの運転免許センターにおいて、必要な検査を受けることができます。

熊本大学大学院教授池田学氏(認知症医療の専門家)による高齢ドライバーのチェックリストが新聞で公表されている。家族が同乗して定期的に運転行動を観察し、次の一つでも繰り返すようなら要注意となるそうだ。

(a) センターラインを越える
(b) 路側帯に乗り上げる
(c) 車庫入れに失敗する
(d) ふだん通らない道に出ると急に迷う
(e) ふだん通らない道に出るとパニック状態になる
(f) 車間距離が短くなる

道路交通法上、認知症の人は、自動車の安全な運転に支障を及ぼす恐れがある病気にかかっていることとなり、試験に合格しても免許の拒否や留保となり、既に免許を取得している場合でも取消しや停止になります。医者に認知症と診断された人のみならず認知症の疑いがあるとされる人の運転免許も、当人若しくは家族等の申請により適性検査を実施したり診断書を提出してもらい、取消し又は経過をみるために停止処分になることがあります。

また認知症とは無関係に、運転免許の更新時期に75歳以上の高齢運転者に対しては、認知機能検査(高齢者が緊張感を抱かないよう「講習予備検査」と通称する)を行うことが義務づけられました。講習予備検査は、医療現場でも採用されているテストで以下の項目について検査を受けます。
(a) 時間の見当識(検査時における年月日・曜日・時間を答える)
(b) 手がかり再生(花や動物のイラストを記憶し、一定の時間をおいてヒントを見ながら思い出す)
(c) 時計描画(指定された時刻を示すよう時計と針の絵を描く)

結果は独自の計算式で採点し、受講者を三分類に分ける。
(@) 第1分類(36点以上):過去1年間に信号無視などの交通違反歴があれば、都道府県公安委員会が指定する専門医の検査を義務づけ、認知症と診断されれば免許を取り消す。違反がなくても、次回更新までに違反すれば、臨時適性検査の受診を義務づけるほか、免許の返納も含め医師や家族と相談するよう勧める。
(A) 第2分類(0.001〜36点未満):1時間の実車指導で、信号無視や進路変更の合図不履行など違反行為があれば、そのたびに指摘して、できるまでやり直しをさせる。
(B) 第3分類(0点以下):通常より1時間ほど短い高齢者講習を受講でき、30分の検査時間で済む。講習料も減額される。

但し、現実には運転危険な高齢ドライバーでも免許更新に成功しているという事例もあり、講習予備検査だけで問題は解決していません。記憶力・判断力が低下している高齢運転者がどうしても運転をやめない場合は、家族等が警察に医師の診断書を提出することで免許を取消してもらうのがいいでしょう。


(A) アルツハイマー病
場所の見当識障害から、運転中に道に迷ったり、どこへ行こうとしていたのか目的地を忘れてパニックになる。
視空間認知の障害・視覚認知障害が目立つようになると、センターラインからはみ出して走行する危険性があったり、駐車や幅寄せが下手になったりする。車庫入れ時に車を擦る等の自損事故も多くなる。

(B) 血管性認知症
場所の理解ができないこともある。
運転中ボーっとして注意散漫になることがある。
ハンドル・ブレーキの運転操作が遅くなる。
集中力が低下し刺激に対する反応時間が遅くなったり、半分の空間に注意が向きにくくなったり、手足の麻痺が残ったりしている場合には、認知症はごく軽症でも自動車運転が危険になる。
但し、適切なリハビリとリスクファクター管理がしっかりとできていれば、認知機能障害は進行しにくいため、必ずしも運転中止を要さないケースもある。

(C) レビー小体型認知症
錯視の危険と共に、パーキンソン症候により体の動きが遅くなることから、運転が危険になる可能性が高い。

(D) ピック病(前頭側頭葉変性症)
場所は理解しているが、わが道を行くタイプで運転中のわき見が多く、車間距離が短くなる。
自動車運転技術そのものは保たれていても、交通ルール無視(信号無視、道路標識無視)が非常に多く、そのために重大な事故を起こす危険がある。
脱抑制を背景とした危険な運転が問題になる。

*認知症高齢者数の最新推計値
2012年8月、厚労省は要介護認定のデータを基に、認知症高齢者数の最新推計値を発表した。日常生活に支障がある程度の認知症患者数は、2012年現在305万人(65才以上人口の約1割)、2015年=345万人、2020年=410万人と予想した。
2013年6月、厚労省は朝田筑波大学教授を代表者とする研究班による実際の面接や聴き取り調査、医師の診断等によるデータ分析を基に2012年末時点の認知症高齢者数の最新推計値を462万人に上方修正した。(305万人と462万人の差は、介護保険を使っていない認知症高齢者数と推計される)


(MCI = Mild Cognitive Impairment)
平成25年6月、厚労省は、2012年末時点の認知症高齢者数の最新推計値を462万人と発表したが、同時に認知症予備軍の高齢者数(軽度認知障害者=MCI)を400万人と公表した。

   認知症有病者   (高齢者に占める割合)    MCI(軽度認知障害者) 
 2012年  462万人 15% 400万人 
2020年 617万人 17.6% 534万人
2025年 700万人 19.8% 606万人
 2030年 787万人 22%  681万人 
2040年 877万人 23.4% 759万人 
2050年 906万人 24.8% 784万人 
                                      (厚生労働省2018年発表)

認知症になっていない人の中でも、アルツハイマー病になる危険性のある状態を軽度認知障害(MCI)という。MCIは認知障害の程度が軽度であるので、一般的な認知機能はほぼ正常に働き、日常生活も普通にできる。しかしほっておくと、アルツハイマー病に陥ってしまう可能性が高いので、食事や生活習慣を改善することにより、アルツハイマー発症率を下げる必要がある(食事や生活習慣の改善により、発症率を下げることができるという研究結果が報告されている)。

アルツハイマー型認知症の初期の頃は、物忘れだけが目だち、普通に生活ができる時期がある。老化による知的能力の低下だけなのか、軽度認知障害(MCI)なのか、判断の基準として、次の5つが全部当てはまるとMCIと考えてよい。その場合は、早急に病院で検査を受け、MCIの早期発見、進行予防の治療を受ける必要がある。2021年6月、米国食品医薬局(FDA)が認可した、エーザイ(株)と米国Biogen共同開発のAduhelm(アデュカヌマブ)は、MCIを確実に治療できる期待の新薬だ。

(a) 物忘れを自覚している(主観的な記憶障害を訴える)。家族が確認する等周りの情報でもよい。
(b) 客観的に記憶障害がある(新しいことが覚えられない、維持できない、思い出せない)。
年齢の割に異常な記憶力低下が見られる。(記憶検査では平均値の1.5SD以下、SD=standard deviation)
(c) 記憶以外の全般的な認知機能は正常である。
(d) 車の運転や家庭生活など日常生活は基本的にできる。
(e) 認知症ではない(痴呆はない)。



(Ebbinghaus's Forgetting Curve)
ドイツの心理学者Herman Ebbinghausが被験者に無意味な音節を暗記させて一定時間・期間経過後の記憶を調べた実験データ。
20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。
1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。
1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。
1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。
1ヶ月後、には79%を忘却し、21%を覚えていた。(復習をせず、ただ暗記しただけだったら、1ヶ月後には8割を忘れている)

エビングハウスの忘却曲線

この実験結果によれば、もし一定時間後に再学習を重ねると、記憶から失われる記憶量は大幅に減らすことができるということになる。1度覚えたものは最初の24時間を乗り越えれば、1ヶ月後も5%くらいしか忘却しない。記憶力とは結局は初期24時間の反復の問題。孫が学校で習ったことを復習しなければ翌日には74%を忘れてしまっているのは標準だ。

復習をすることで記憶量を大幅に増やすことができる。復習すればするほど覚えていく。復習のタイミングについては、1回目の復習(忘却を防ぐための作業=記憶保持作業)をするのは覚えてから数時間以内が効果的だ。なぜなら、1日経つだけで記憶したことの74%を忘れてしまうから。2回目以降の復習は「1日後、1週間後、1ヵ月後」がよい。復習すればするほど忘れていくスピードが落ちていく。

そして、復習する際の労力を最小限にするには早期に復習した方がよいので、このような時間的間隔になる。理解を要する理論暗記・論点暗記も同様で、暗記しては忘れて、また暗記しては忘れて、という反復作業を繰り返すことによって、短期記憶を長期記憶へと近づけることができるといわれている。昨日覚えたものの1/4しか今日思い出せなくても標準であり決して認知症のなりかけではありません。昨日覚えたこと自体を忘れてしまう人は認知症の疑いがあるでしょう。




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