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(2A)ペットによる咬傷事故判例

(2A-1) 【東京高判平25.10.10】 1,725万円
平成23.5.21東京の高級マンション内で反町隆史・松嶋菜々子夫婦(俳優・女優)の飼っている大型犬(Doberman)を当時6才の同夫婦の子が散歩に連れ出そうとしたところ、同じマンションの敷地内で、住人母子めがけて犬が勝手に走り出し、4才の子に向かってきたので、母親が子をかばうため間に入ったところ、大腿部を咬まれ、救急車で病院に運び込まれたという事件が発生した。犬に咬まれた女性は、右大腿表皮剥離の傷害を負い、11日で5回通院するはめになり、その後、俳優夫婦とは、病院代+慰謝料を払うことで示談が成立した(31万円)。しかし、この住人(有名デザイナー家族)は恐怖感からこのマンションに住めなくなり、1か月以内に転居したので、マンションを貸していた管理会社が、俳優夫婦に損害賠償を請求した。契約はあと27か月あったので、一審では5,000万円(200u以上、家賃月額175万円)請求したが、東京高判平25.10.10は、次の入居者を見つけるまでの合理的な期間を9か月とみなし、弁護士費用の一部も含めて1,725万円の支払いを命じた。実際、次の入居者が決まるまでこの家は17か月間空き家であった。

このマンションの管理規約には「部屋で飼える小動物」以外のペットは飼育禁止となっていたから、俳優夫婦は管理規約にも住人の安全を守るべき注意義務にも違反していた。運悪く4才の子が体重40kgの犬に襲われていたら、命を落としていたかもしれず、大腿部を咬まれた女性がカバンで犬をたたくなどしても、犬は咬みついたまま離れようとせず、騒ぎをきいて駆けつけた俳優夫婦の家政婦がようやく引き離したという。

入居者を失い、家賃収入を失ったマンションの管理会社が俳優夫婦を訴えた裁判で、咬傷事件の直接的被害者ではない第三者が、間接損害の賠償を請求できるかが争われた。俳優夫婦は、犬が咬みついたことと、住人による賃貸契約の解除には予見可能性がなく、自分たちは、咬傷事件の加害者ではあるが、不動産管理会社の賃料債権を侵害する故意も過失もなかったと責任を否定した。しかし、裁判所は、賃料債権の喪失を逸失利益とみなし、飼犬を適切に管理しなかった、動物の占有者たる俳優夫婦の負担すべき性質のものであるとして、その責任は間接損害にも及ぶと判断した。



(2A-2) 【名古屋地判平14.9.11】 799万円
平成11年12月、市内の路上を散歩中の男性(当時49才)に、突然背後から飼い犬が襲い掛かり、ふくらはぎを咬みつかれた。男性は、左膝内障傷害と診断され、更に、咬まれた直後に当該犬が狂犬病の予防注射をしていなかったことを知り、狂犬病発症におびえてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した。男性はロンドン大学の博士号をもつ高学歴で、コンピュータ技師として月額130万円の収入を得ていたが、強度のパニック症状により情緒不安定となり、就業できない状態になった。
この犬は、飼主の敷地内で放し飼いにされていたが、外に出ないように立てかけていたトタン板がなぜか外れて、犬が通り抜ける隙間ができていたため、犬が自由に路上に出ることができる状態だった。
飼主は夫婦とその長男の3人、3人ともこの犬の占有者として訴えられたが、飼主は妻一人であり、夫と長男は占有者でもなく責任もないと主張した。裁判官は3人を共同占有者と認定、登録名義人は長男だが、犬の占有・管理は家族全員であり、3人とも責任を負うとした。男性はこの事故で被った損害は2,758万円になると、この金額を請求したが、裁判官は、男性の慰謝料、逸失利益などの損害賠償合計を799万円と計算し、夫婦と長男共同でこの金額を支払うことになった。(飼主は10万円の見舞金を先に支払っているので、判決の金額は789万円)



(2A-3) 【大阪地判昭61.10.31】 230万円
大阪府池田市で男性が大型犬(秋田犬、体重35kg)を鎖につないで散歩させていた時、近づいて来た顔見知りの女性(28才)が犬に手を出したので、飼主は「怖くないですよ」と答え、自らその女性に犬を連れて近づいたところ、急に犬が女性に飛び掛り顔に咬みつき、鼻尖部挫滅創の大怪我を負わせた。鼻を咬まれた女性は本件事故後2年にわたって入院5回(合計入院日数48日)、通院22回の入院・通院を余儀なくされ、総額1055万円(内130万円は内金として入金済)の損害賠償を請求した。被害者に本件事故を誘発せしめたと認められる行為はなく、飼主の主張する過失相殺は適用されなかった。裁判所は、飼主としての注意義務違反による、飼主責任を認め、治療費・通院中慰謝料・後遺症慰謝料・弁護士費用などをあわせ、230万円の損害賠償を命じた。(但し、内130万円は支払済)なお、女性の傷害は幸にも計4回にわたる形成手術によりかなり好転し、特殊化粧品を使って日常生活上は通常人とほぼ遜色のない程度に回復しているものの、素顔においては、その痕跡を残し、今後の形成手術によっても、これ以上の改善は期待できないと判断された。



(2A-4) 【東京地判平14.6.27】 208万円
飼主が都内の路上で、秋田犬(体重27kg)を手綱につないで散歩させていたところ、近所の知人女性(当時52才)が歩行中、すれ違いざまに飼主に挨拶、「メイ(犬の名)ちゃん、今晩は」と飼犬にも挨拶した途端、この犬が女性の顔面に咬みついて、女性は顔面裂傷等の傷害を負った。手綱は70cm位だったが、この未婚の女性は、自賠責後遺障害等級表第12級14号(外貌に醜状を残すもの)に相当する後遺症が残り、16か月に及ぶ通院を余儀なくされた。飼主は犬に近寄った女性の過失と主張したが、裁判官は、飼主が犬が咬みつかないよう手綱を短く持つなり強く持つなりして事故を防止する義務があったと認め、相当の注意をもって犬を保管していたとは言えないと判断した。飼主は、女性が飼い犬にちょっかいをかけたのが原因で、いわば自招行為と主張するも、裁判官は、女性は犬に対する挑発行為も加害行為もしていないから自招行為による免責には該当しないと飼主の主張を退けた。但し、この秋田犬と女性の飼犬は以前から仲が悪く、本件事故が発生した時は、女性は自分の犬は連れていなかったが、そのような事情がある場合に、あえて秋田犬に近づいたことに過失があるとして、被害者に3割の過失があると認定し、298万円と算定した女性の被害額から過失割合を差し引き、208万円の支払いを命じた。(一部の病院の治療代と交通費は別途飼主が先に支払済)



(2A-5)【名古屋高判平15.9.4】 204.5万円
愛知県で開催された犬のマラソン大会会場の公園で、見物に来た愛犬家が、同じ愛犬家の飼育する大型犬(Bernese Mountain dog)に右手を咬まれて傷害を負った事故につき,裁判官は犬の飼主の不法行為を認定し、損害賠償を命じた。飼主は、咬み癖のある犬に口輪もせず、2m近いリードに繋いで直径4mの範囲で行動できる自由を与えていた過失があり、一方の被害者は当日、多量のフランスパンを携行して、知り合いの人達へあいさつ代わりに配って歩いていたが、愛犬家として犬の興味を惹きやすい行動を取っていることの自覚が足りなかったとして、被害者に2割の過失を認めた。飼主は、相当な注意をもって犬を保管していたので、民法718条1項但書の免責を主張していたが認められず、裁判官は、被害者の負傷中の逸失利益などから2割の過失相殺をして、約204.6万円の支払いを命じた。



(2A-6) 【福岡地判平17.7.8】 175万円
男性が、隣家の飼犬が吠えるのを止めさせようと、開いていた門扉から隣家に侵入したところ、隣家の飼犬に脚を咬まれ、1ヵ月入院の大怪我を負った。その男性は犬の飼主に対し、約530万円の損害賠償を請求した。裁判官は、被害者の損失を290万円と認めるとともに、門扉を閉めずに犬小屋の鍵を開けた飼主の管理義務違反を認めたが、一方、男性も当初は犬の吠えるのを止めさせるために犬にパチンコ玉を当てる目的で侵入し、犬小屋に近づいた点や、以前も犬に銀玉鉄砲を撃ったり、棒で突いたりしていたことを認定し、4割の減額とし、飼主に対し約175万円の支払いを命じた。



(2A-7) 【福岡地判平16.9.21】 150万円
夜、福岡県那珂川町の歩道を男性が綱をつけて秋田犬を散歩させていたところ、歩道を自転車で走行中の女性のズボンの裾に犬が咬みつき、その弾みで自転車が転倒、その上、女性は背中や腕に咬傷を負い、1週間入院した。そのショックでめまいや嘔吐など、恐怖心による急性ストレス障害に陥ったため、裁判で、犬の飼主に対し、約310万円の損害賠償を請求した。飼主側は、「犬は非常に温和であり、女性が道路交通法に違反して歩道を自転車で走行したことが事故の原因であるから、飼主には責任はない」と自己の責任を否定したが、裁判官は、「飼主は犬の前方を歩いていたため、事故に気づくのが遅れたのであって、相当の注意を払ったとは認められない」として、犬の飼主の保管注意義務違反を認め、約150万円の支払を言い渡した。また、女性が歩道を自転車で走行したこと(道路交通法違反)と本件咬傷事故とは法的に因果関係はないと、飼主の責任逃れを認めなかった。



(2A-8) 【京都地判平14.1.11】 74万円
大同生命保険会社に勤務する保険外交員の女性が、訪問した会社で飼っていた中型犬(約1mの鎖で繋がれていたShepherd系雑種)に腕を咬まれ、訳5か月の通院(実数は22日)を要する傷害を負った。治療が終わった後もしびれ・醜状瘢痕などの後遺障害が残ったため、女性は飼主である会社社長に、約439万円の損害賠償請求を行った。この犬は、過去少なくとも2回人に咬みついたことがあり、気の荒い性格であったが、頻繁に仕事でこの会社を訪れる必要があるため、女性は犬を慣らす必要があると考え、わざと犬に近づいて、「お手」などをさせていた。そうこうしている間に、おとなしそうにしていた犬が突然保険外交員の腕に咬みつい手事故が発生した。飼主は、犬は繋いであり、毎日散歩にも連れ出しているので飼い主の責任はないと主張したが、裁判官は、
過去2度咬みつき経歴のある犬であれば、人が不用意につかづくことがないように張り紙などをして注意を喚起する等の配慮をすべきであったと、飼主の免責を否定した。但し、女性にも安易に犬に触り咬みつかれた過失があるとし、その過失割合を6割とした。裁判で認められた女性の損害は226万円、過失相殺後、この4割、90万円を飼主社長が負担すべきとした。但し、労災保険とか飼主が先に支払った見舞金などを差し引き、判決は74万円の支払いを命じた。



(2A-9) 【広島高判平15.10.24】 50万円
小学校5年生の女子が他人の家につながれている飼犬に口部を咬まれて傷害(12日の通院)を負い、後遺障害が残ったとして、当該女子とその両親が,飼主に対し、慰謝料等の損害賠償を請求した。飼主は、公道から自由に出入りできる自宅車庫に犬をつないでおり、「犬にさわらないで」という看板を設置していた。飼主は自分の犬が女子を咬んだことを認めず、仮に咬んだとしても、相当な注意をもって飼犬の保管をしていたから責任はないと主張。仮に飼犬の保管につき不注意があったとしても、女子にも過失が認められるので、過失相殺がなされるべきだなどと主張した。裁判所は、飼犬が女子を咬んだと認定した上、飼主側の相当な注意をもって飼犬の保管をしていたとの主張を認めず、女子に対する損害賠償責任を認めた。その上で,女子にも事故を誘発した過失が認められるとして5割の過失相殺をした。最終的に、女子の損害として傷害慰謝料20万円のほか、後遺障害慰謝料30万円(60万円の損害額に5割の過失相殺を適用)などの支払いを命じた。



(2A-10) 【東京地判平4.1.24】 23.4万円
明治神宮外苑内において、女性が飼犬(柴犬4才、雄、体重約13.5kg)を鎖でつないで連れて散歩中、放し飼いで遊ばせていた犬(雑種、雄、女性の飼犬とほぼ同程度の体重)が駆け寄って女性の犬に襲いかかったので、女性が飼犬を抱き上げたが、その際、犬が女性の右前腕部に咬みつき、約1か月の治療を要する咬傷を負わせた事件。被害女性は1か月に17回通院、女性の右前腕部の手首から約4cmの箇所に、長さ3.3cmの傷痕があり、この傷痕は将来にわたって消えないと主張、後遺障害も含め、296万円の損害賠償を請求して提訴した。一方の放して遊ばせていた犬の飼主は、自分の犬が咬んだ証拠がないと責任を否定、喧嘩争闘中の犬の間に腕を出すときは、犬はその腕を闘争相手と誤解して攻撃する習性があるから、犬を蹴る等の方法によるべきであったとして、腕を出した女性に過失があると主張した。裁判官は、女性に咬傷を負わせた犬が特定できない場合であっても、公共の場で犬を放し飼いにしていた飼主にすべての過失があると判示して、女性の慰謝料15万円を含む合計23.4万円の支払いを命じた。但し、女子の外貌に醜状を残す後遺障害は認めなかった。



(2A-11) 【大阪地判昭41.11.21】 19.6万円
電気工事業者(当時61才男性)が、タオル印刷業者に依頼されてその敷地内で工事をするためはしごを取りに行ったところ、鎖に繋留されていたシェパード犬(6才雄、体長165cm)に突然右下腹を咬みつかれ、腸壁の動脈破裂、その後3週間入院、46日間通院する羽目になった。この犬は過去にも近隣の人に咬みついたことがあり、飼主は犬に口輪をはめるとか、予め工事人に猛犬であることを告げるなどの義務を果たすべきであったところ、義務違反が認められた。一方の工事人は、このような大型犬は警戒心が強く危険性の多いことを認識すべきであったとして、裁判所は、飼主の過失70%、工事人の過失30%と判断した。被害者が41.2万円を請求したのに対し、裁判所は、休業期間一日2,000円 x 69日=138,000円を逸失利益と認定し、この70% = 96,600円 + 慰謝料10万円、合計196,600円の支払いを命じた。



(2A-12) 【名古屋高判昭32.5.10】 15万円
昭和23年、当時3才10ケ月の女児が友人3人と近所の菓子雑貨店にお菓子を買いに行ったところ、金属の鎖で繋留されていたアイヌ犬が突然女児に襲いかかり、女児を押し倒して顔面・頭などに咬みついた。当時店の者は留守で不在、被害者側は100万円の肉体的及び精神的苦痛に対する慰謝料を請求した。この犬は過去にも何度か人に咬みついて怪我をさせた狂暴性のある犬であり、小売店という不特定多数の来客の予見される場所においては、飼主は犬が他人に危害を加えることのないように万全の措置を講じて保管すべき注意義務を負担するのであり、女児の過失行為責任は評価の対象とならず、女児の両親の監督責任も否定された。加害者側は応急措置の治療費150円を負担したが、裁判では更に15万円の慰謝料の支払いが命じられた。(1948年の事故当時の金銭感覚と現在では大いに異なるので、金額は参考にならない)



(2A-13) 【横浜地判昭33.5.20】 10万円
横浜市の米人特設区域内に居住する米軍関係者夫婦同士(隣人)の飼犬による咬傷事件についての損害賠償請求裁判。慰謝料を含む損害賠償130.5万円を請求した被害者は、小型犬の飼主で米軍中佐夫人。一方の加害者側犬の飼主は米軍軍属の米国人男性で、それまでは犬を放し飼いにしていた。軍属米国人民家附近の空地を散策中、米軍中佐夫人の背後より放し飼いの飼犬が突然襲いかかって、夫人の左足首の上部に咬みつき、そのため彼女は多量の出血と激痛を伴い、陸軍診療所において応急措置を受けた後も治癒するまで2カ月以上の期間を要した。米軍中佐は夫として、妻の傷害に対し精神上の苦痛を感じたとして夫固有の慰謝料も請求したが、加害を受けた妻の慰謝料取得をもって満足すべきであり、更に夫としての慰藉料を請求することは社会常識に照し好ましくないと認めなかった。加害犬は、その後、米軍軍属邸内に留置し、放し飼いすることなくなったので、裁判官は中佐夫人に対する慰謝料10万円を認める判決を下した。



(2A-14) 【大阪地判昭46.9.13】 0円
飼主宅前に長さ1.5mの鎖で繋留されていた秋田犬(体長1m)の前を通った女性が、突然犬に飛びかかられ、右肘部を咬まれて傷害を負い、約71.7万円の損害賠償を請求した事件。この犬は、食事の邪魔をされたり、身の危険を感じたりしない限り通行人に危害を加えたことがなかった。被害に遭った女性は、わざわざ係留されている犬に近づき、右手を出した際に咬みつかれており、恐らく、食事中の犬を妨害する目的又は頭をたたくなど危害を加える目的で近づいたと推認され、その際に差し出した右肘を反撃的に咬みつかれたと断定されて、これはいわゆる自招行為によって発生したものであるから、飼主に損害賠償責任はないと判断された。


(2B)ペットによる咬殺事故判例



(2B-1) 【札幌地判平27.1.28】 6,300万円
平成26年2月、北海道白老町の海岸を散歩中の主婦(当時59才)が放されていた2匹の土佐犬(いずれも3?4才の雄で、体重約50kg、体長1m超)に襲われ死亡した。女性の顔や腹などに、かまれた傷が多数あった。2匹の犬に突然襲われて海に追い込まれ、最終的に溺死したのだ。飼主の無職、佐治清(当時65才)は、この凶暴な犬2匹を含め合計3匹の土佐犬を、飼犬の登録も狂犬病予防注射もさせず、自宅で違法に飼育していた。おまけに、犬を海岸に連れていくための軽自動車の車検は受けておらず、自賠責保険にも入っていなかった。(事件後、2匹は保健所で殺処分された)

男は重過失致死罪で懲役2年6か月(求刑懲役4年、罰金20万円)、罰金20万円の実刑(札幌地判平26.7.31)、服役中に遺族(夫と3人の子)から損害賠償を請求され、慰謝料など求刑通り6,300万円の支払いを命じる民事判決が出された。裁判官は「土佐犬は大型で、人に危害を加えることが予想されるのに、安易な考えで綱を手放した過失は重大」と指摘した。男は自分の犬が女性を襲ったことを知らないことにして犬を連れ帰宅したが、目撃情報から犯行がばれた。大型犬の飼主は、特に犬が危害を加えないよう未然に防止する注意義務を負うことを忘れてはならない。



(2B-2) 【甲府地判平26.3.6】 5,433万円
平成23年8月夕刻、市内を散歩中の女性(当時56才)が、中型の飼犬に襲われ、転倒して頭を強く打ち、1カ月後に死亡した。この犬は、繋がれていた紐(リード)が切れて飼主の男性(71才)宅から逃げ出したところだった。この犬は1年前にも逃げ出して同じ女性に咬みついたことがあり、犬が係留を嫌って紐を強く引っ張る可能性を十分認識できたはずだ、と裁判官は指摘した。にもかかわらず、鎖ではなく、散歩用の紐で係留していたばかりか、紐の劣化を認識していながら放置した飼主の責任は重大と、飼主の管理・注意義務違反を認め、5,433万円の支払いを命じた。この飼主は、甲府簡裁から過失致死罪で罰金50万円の略式命令も受けているが、被害者の夫は「妻の命を奪っておきながら罰金刑だけでは納得できない」といい、実際、過失の程度によっては重過失致死罪(刑法211T後段、最高懲役5年)も適用されかねない事案であった。



(2B-3) 【水戸地判昭57.9.16】 2,921万円
昭和53年3月正午過ぎ、5歳の少女が自宅近くの農道で、2匹の犬に襲われ、全身咬創による出血多量、肺損傷により死亡した。咬傷は、顔・首・胸・腹・背・太腿などに及んでいた。2匹の犬は近くの別荘で飼われていた雄の秋田犬で、しばしば放飼いにされていた。被害者の両親は犬の飼主に対して3,400万円の損害賠償を請求した。(なお、少女を襲ったと思われる方の犬一匹は、その後飼主の元に戻らなかったため、事件当日の夕刻、保健所が毒饅頭を散布した結果、翌朝、死亡しているのが確認された、)判決では、犬の飼主の責任が全面的に認められ、被害者少女に一切の過失はなく、犬の飼主に対して2,921万円の支払を命じた。内容は、18才から67才までの就労可能期間の昭和53年当時の女子労働者全年齢平均給与額(賃金センサス)に基づき、年収163万円をベースに、逸失利益1,469万円、慰謝料1,200万円、弁護士費用200万円、その他治療費・葬儀関係費等である。最近の賃金センサスによれば、女子労働者全年齢平均年収335万円であるから、本件事故当時の約2倍、慰謝料も2倍として、現在の価値で約6,000万円ほどであろうか。裁判では、同時に行政(茨城県知事)も訴えられたが、飼主の不適切な管理は予見出来なかったとして、行政に責任無しとした。



(2B-4) 【最判昭57.9.7】 3, 914万円
1975年3月、大阪市内で闘犬を飼育していた夫婦(内縁関係)の土佐犬(当時3才、体重50kg)を、使用人が散歩に連れ出したところ、路上で祖母に連れられて散歩していた幼児(2才の長男、一人っ子)がこの土佐犬に襲われ、顔、首、頭などを咬まれて死亡した事故が発生した。飼主・内縁の夫は、合計8頭の土佐犬を飼育していたが、事故当日は出張で家におらず、内妻は自分は無関係と自己の責任を否定したが、二審、最高裁では、内妻も共同飼育占有者とされ、夫婦の共同不法行為として、夫婦双方に賠償責任を負わせた。すなわち、酒に酔った使用人が、無断で連れ出した飼犬が引き起こした事件ではあっても、飼主夫婦にその結果責任があると認められた。闘犬用の土佐犬は、体格や体力が通常の飼犬とは比較にならないほど強大で性格も獰猛であるため、その管理については、他人の生命・身体等に危害を加えることのないよう、格段の注意を払わなければならないのに、飼主は従前からこれを怠り、過去5年の間に10回以上、通行人や他人の飼犬を襲う事故が繰り返されていて、飼犬が咬み殺された事件もあり、保健所から口輪をつけて散歩させるよう注意を受けていて、警察署からは警告を受けたこともあった。なお、判決は3,914万円だが、判決確定までの7年半分の金利(年5%)を含めると、夫婦の支払い額は5,292万円になる。



(2B-5) 【東京地判昭47.7.15】 150万円
交配用の犬を飼っている業者が、小型犬(Pomeranian、雄)を散歩させていたところ、見通しの悪い交差点付近で約7m離れたところに秋田犬(生後1才2ヶ月、40kg)を発見、足先30cm前にいた小型犬を急いで抱きかかえようとしたが、秋田犬に咬まれて即死した。飼主は秋田犬にリードをつけて散歩していたが、制御できなかった。この小型犬は、繁殖業者が交配用として60万円で輸入したもので、年間交配料収入150万円を稼ぐ金の卵。裁判所は業者に対して「他犬との不意の接触、自動車事故等を避けるため、犬を引率者の前に出さず、予め安全を確かめるべきであり、危険から守るため即座に犬を抱きかかえる等の避難体制をとれるようにしなければならない」と、小型犬を散歩させていた者の過失割合を3割と認定し、逸失利益は約218万円と計算されるので、秋田犬の飼主が支払うべき金額を150万円とした。



(2B-6) 【名古屋地判平18.3.15】 67万円
名古屋市内の歩道をリードをつけて散歩させていた小型犬(miniature Dachshund、5才)に、鎖から外れて敷地外に出た中型犬(雑種、3才半)が咬みつき、殺してしまった。加害犬の飼主女性(77才)は、普通は自宅敷地内で放し飼いにしており、この日は、たまたま散歩に連れ出すため鎖をつけようとしていたところ、飼主の手をかいくぐって犬が敷地外に逃走、本件事件を起こしたものだった。被害者女性は、首や腹部に咬みつかれた被害犬をかばおうと止めに入ったところ、転倒し、顔面等を道路に打ちつけ顔面挫傷、左右指咬創、右ひざ挫創等で加療2週間の傷害を負った。被害者夫婦とその子3人が、加害犬の飼主に損害賠償として、家族の大切な一員である飼い犬を、無残にも咬み殺された精神的苦痛に対する家族3人の慰謝料130万円を含め、総額181万円を裁判で請求した。法律上「物」である犬の死亡に伴う慰謝料はありえないと主張する加害犬の飼主に対し、裁判官は、我が子同様に溺愛していた愛犬を突然咬み殺されたことによる慰謝料は認められるとし、3人に慰謝料50万円、ほかに、飼犬の火葬代、散歩させていて傷害を受けた妻の治療費などとして17万円、合計67万円の支払いを命じる判決を下した。

裁判で、加害犬の飼主女性は、相当の注意を払って犬を飼っていたから免責だと主張したが、裁判官は、77才の女性が中型犬が自分の手を潜り抜けるような事態が発生しても、犬が自宅敷地内から外に出ないよう注意を払わなければならず、犬が自宅敷地外に出たということは注意が足りなかったと指摘し、飼主の過失(注意義務違反)を認めた。少子高齢化時代、ペットは家族の一員であり、ペットをなくした飼主家族の精神的苦痛は、慰謝料をもって償うのが相当であるとされた



(2B-7) 【東京高判昭36.9.11】 30万円
友人のBoxer犬(3才)を勝手に散歩に連れ出し、東京都内の土手で遊ばせていたところ、たまたま放し飼いしていた他の犬と突然咬み合いの喧嘩になり、負傷して肺気腫症を起し、それが原因で死亡した、として、飼主に損害賠償を請求された。仔犬として5万円で買い受けたものだが、日本警備犬協会・全日本畜犬登録協会より家庭犬中等訓練試験合格証(総評優)を授与され、又国際畜犬連盟主催の愛犬綜合大展覧会において優秀犬として受賞された犬で、少なくとも27万円の価値はあると判定され、更に飼主の慰謝料として3万円、合計30万円の損害賠償が命じられた。いくら友人でも、無断で他人所有の犬を引出し、しかもその危害防止のため万全の手段を講じなかったことに過失があり、責任は免れないとされた。(原審は東京地裁)



(2B-8) 【大阪地判平21.2.12】 20万円
飼主にぴったりついて散歩していた飼い猫が、突然家の鎖から離れて路上に出た紀州犬(中型犬)に咬みつかれ、この猫が死んでしまった。飼犬は、普通は紐につないでいたが、金具が偶然付け根から抜け落ちたため、犬が離れてしまい、敷地外に出たのだった。猫は、飼主が、生まれて間もない子猫を知人から無償で譲り受けた雑種で、年齢18才。我が子のように愛情を注いで育ててきた猫を、目の前で咬み殺された飼主は、犬の飼主を訴え、慰謝料130万円を請求した。犬の飼主は、老齢の猫には財産的価値はなく、民法上の「物」を失ったことによる慰謝料は発生しないと主張、もともと、自分の家の前を猫に散歩させるなら、犬が敷地外に逃げるかもしれないから、猫に紐をつけて散歩させるべきであり、本件事故が起こった原因は、紐につながず猫を散歩させた猫の飼主ににあるとの理論を展開、過失相殺されるべきだと主張した。

裁判官は、うちの犬が逃走するかもしれないから、近隣を通行するものは注意すべきであると主張するに等しい犬の飼主の言い分は受け入れられないと断じ、大阪府動物愛護管理条例§4が犬の放し飼いを禁じているのであるから、猫を咬み殺す事故を起こした犬の飼主の保管義務違反は不法行為に当たると判断した。確かに猫を放し飼いの状態で散歩させた飼主にも軽微な落ち度があるが、犬を敷地外に逃がした飼主の注意義務違反の程度のほうが著しいので、過失相殺は適当でないと、猫の飼主が蒙った精神的苦痛に対する慰謝料として20万円の支払いを命じた。



(2B-9) 【春日井簡判平11.12.27】 18万円
飼主の母が近所の公園で小型犬(Pomeranian、当時8才)をリードにつないで散歩していたところ、大型犬1匹と中型犬2匹を同時に散歩させていた男性(当時66才)から、大型犬が小型犬めがけて飛びかかったため、男性はそのはずみでリードが手から外れ、小型犬はあっという間に左胸部を咬みつかれた。胸部咬傷が原因で胸郭内に膿がたまり、肺炎を併発してPomeranianは3日後に死亡した。加害犬の飼主は、咬みつかれた小型犬がまだ生きていたのでそのまま立ち去ったが、通りがかりの近所の女性が大型犬の飼主のことを知っていて、通報され、彼はやむなく、かみ殺された小型犬の治療・手術代実費123,500円を支払った。納得いかない小型犬の飼主が裁判に訴えた内容は、獣医科医院に支払った123,500円に加えて、犬の代金18万円及び慰謝料20万円、合計38万円を請求するというもの。裁判所は、老人が大型犬を含む3匹の犬を同時に散歩させるのは、犬の動作を充分制御できる体制をとっていなかったとして飼主の過失を認め、同時に被害犬の飼主に対して、今回の事故の3年前にも散歩中に別の犬に咬まれたことがあるのだから、小型犬の飼主は危険を避けるため抱きかかえるなどの行為を取るべき義務があったと認め、過失割合を加害犬側80%、被害犬側20%とした。裁判では犬の相場を8万円と認定、慰謝料3万円と認め、それに治療・手術代実費を含めた合計233,500万円を実際の損害額と認定、過失割合を考慮し、加害犬側はその80% = 186,800円を負担すべきとした。(123,500円は既に支払っていたので、追加で払うべきは63,300円となる)