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(2B)ペットによる咬殺事故判例


(2B-1) 【札幌地判平27.1.28】 6,300万円
平成26年2月、北海道白老町の海岸を散歩中の主婦(当時59才)が放されていた2匹の土佐犬(いずれも3〜4才の雄で、体重約50kg、体長1m超)に襲われ死亡した。女性の顔や腹などに、かまれた傷が多数あった。2匹の犬に突然襲われて海に追い込まれ、最終的に溺死したのだ。飼主の無職、佐治清(当時65才)は、この凶暴な犬2匹を含め合計3匹の土佐犬を、飼犬の登録も狂犬病予防注射もさせず、自宅で違法に飼育していた。おまけに、犬を海岸に連れていくための軽自動車の車検は受けておらず、自賠責保険にも入っていなかった。(事件後、2匹は保健所で殺処分された)

男は重過失致死罪で懲役2年6か月(求刑懲役4年、罰金20万円)、罰金20万円の実刑(札幌地判平26.7.31)、服役中に遺族(夫と3人の子)から損害賠償を請求され、慰謝料など求刑通り6,300万円の支払いを命じる民事判決が出された。裁判官は「土佐犬は大型で、人に危害を加えることが予想されるのに、安易な考えで綱を手放した過失は重大」と指摘した。男は自分の犬が女性を襲ったことを知らないことにして犬を連れ帰宅したが、目撃情報から犯行がばれた。大型犬の飼主は、特に犬が危害を加えないよう未然に防止する注意義務を負うことを忘れてはならない。


(2B-2)【甲府地判平26.3.6】 5,433万円
平成23年8月夕刻、市内を散歩中の女性(当時56才)が、中型の飼犬に襲われ、転倒して頭を強く打ち、1カ月後に死亡した。この犬は、繋がれていた紐(リード)が切れて飼主の男性(71才)宅から逃げ出したところだった。この犬は1年前にも逃げ出して同じ女性に咬みついたことがあり、犬が係留を嫌って紐を強く引っ張る可能性を十分認識できたはずだ、と裁判官は指摘した。にもかかわらず、鎖ではなく、散歩用の紐で係留していたばかりか、紐の劣化を認識していながら放置した飼主の責任は重大と、飼主の管理・注意義務違反を認め、5,433万円の支払いを命じた。この飼主は、甲府簡裁から過失致死罪で罰金50万円の略式命令も受けているが、被害者の夫は「妻の命を奪っておきながら罰金刑だけでは納得できない」といい、実際、過失の程度によっては重過失致死罪(刑法§211T後段、最高懲役5年)も適用されかねない事案であった。


(2B-3) 【最判昭57.9.7】 3, 914万円
1975年3月、大阪市内で闘犬を飼育していた夫婦(内縁関係)の土佐犬(当時3才、体重50kg)を、使用人が散歩に連れ出したところ、路上で祖母に連れられて散歩していた幼児(2才の長男、一人っ子)がこの土佐犬に襲われ、顔、首、頭などを咬まれて死亡した事故が発生した。飼主・内縁の夫は、合計8頭の土佐犬を飼育していたが、事故当日は出張で家におらず、内妻は自分は無関係と自己の責任を否定したが、二審、最高裁では、内妻も共同飼育占有者とされ、夫婦の共同不法行為として、夫婦双方に賠償責任を負わせた。すなわち、酒に酔った使用人が、無断で連れ出した飼犬が引き起こした事件ではあっても、飼主夫婦にその結果責任があると認められた。闘犬用の土佐犬は、体格や体力が通常の飼犬とは比較にならないほど強大で性格も獰猛であるため、その管理については、他人の生命・身体等に危害を加えることのないよう、格段の注意を払わなければならないのに、飼主は従前からこれを怠り、過去5年の間に10回以上、通行人や他人の飼犬を襲う事故が繰り返されていて、飼犬が咬み殺された事件もあり、保健所から口輪をつけて散歩させるよう注意を受けていて、警察署からは警告を受けたこともあった。なお、判決は3,914万円だが、判決確定までの7年半分の金利(年5%)を含めると、夫婦の支払い額は5,292万円になる。


(2B-4) 【神戸地判昭61.3.28】 3,020万円
昭和57年2月15日、神戸市須磨区のハイキングコースで小学1年の同級生二人が遊んでいたところ、猪狩りをしていた猟師ら7人が連れていた猟犬6頭のうち、5頭が突然一人の男の子に一斉に襲い掛かって咬みつき、男の子は7時間半後に死亡した。猟銃を持っていた6人は、7才の男の子の生涯の逸失利益相当額(当時の年収約341万円を18才から67才まで稼働として、Leibniz方式で計算)約1,800万円を支払って遺族と和解したが、猟銃を持たず、猟犬6頭を引き連れていただけの男は弁償に加わらなかったので、遺族が猟犬の飼主の男の責任を追及して訴訟に及んだ。男は、人を咬まない猟犬に訓練することは到底できない、いくらハイキングコースとはいえ銃猟禁止区域ではなく、狩猟期間中自由に狩猟できる地域で起こった事故であり、そんなところで子供が遊ぶこと自体が悪いので、襲われた子供に過失があると居直った。裁判官は、7才の子供に過失は認められず、猟犬の飼主には、事故を防止すべき措置を講ずる義務があったと、動物の占有者の責任(民法§718)を認め、慰謝料など1,220万円の支払を命じた。(最終的に猟犬飼主・猟師側の負担額は3,020万円となった。猟師らとの共同不法行為に基づく損害賠償債務については不真正連帯債務となり、和解で免責されなかった猟犬の飼主が1,220万円を払うべきとなった。)

男の子の遺族(両親と妹)は、神戸市がハイキングコースと指定しながら銃猟禁止区域にしなかった兵庫県(知事)の作為義務違反であると、国家賠償法§1に基づく損害賠償も請求したが、行政庁の裁量の範囲内としてこれは認められなかった。(但し、この事故の後すぐに当該地域は銃猟禁止区域に指定された)


(2B-5) 【水戸地判昭57.9.16】 2,921万円
昭和53年3月正午過ぎ、5歳の少女が自宅近くの農道で、2匹の犬に襲われ、全身咬創による出血多量、肺損傷により死亡した。咬傷は、顔・首・胸・腹・背・太腿などに及んでいた。2匹の犬は近くの別荘で飼われていた雄の秋田犬で、しばしば放飼いにされていた。被害者の両親は犬の飼主に対して3,400万円の損害賠償を請求した。(なお、少女を襲ったと思われる方の犬一匹は、その後飼主の元に戻らなかったため、事件当日の夕刻、保健所が毒饅頭を散布した結果、翌朝、死亡しているのが確認された、)判決では、犬の飼主の責任が全面的に認められ、被害者少女に一切の過失はなく、犬の飼主に対して2,921万円の支払を命じた。内容は、18才から67才までの就労可能期間の昭和53年当時の女子労働者全年齢平均給与額(賃金センサス)に基づき、年収163万円をベースに、逸失利益1,469万円、慰謝料1,200万円、弁護士費用200万円、その他治療費・葬儀関係費等である。最近の賃金センサスによれば、女子労働者全年齢平均年収335万円であるから、本件事故当時の約2倍、慰謝料も2倍として、現在の価値で約6,000万円ほどであろうか。裁判では、同時に行政(茨城県知事)も訴えられたが、飼主の不適切な管理は予見出来なかったとして、行政に責任無しとした。


(2B-6) 【東京高判昭52.11.17】 200万円
母親のお使いで7才の姉と4才の弟が買い物に出かけたところ、途中で野犬(体長約1mの成犬3頭)に襲われ、男の子は全身を咬まれて1時間45分後に死亡した。事故が起きた昭和46年当時、千葉県には約4〜5万頭、事故のあった木更津保健所管内には2,000〜3,000頭の野犬がいたとされる。当時、千葉県犬取締条例があり、野犬等による咬致死傷事故が多発していたので、被害者の両親は千葉県(知事)を相手に事故発生を未然に防止すべく野犬を捕獲する義務に違反していたとして1,247万円の損害賠償を請求した。18才〜60才まで就労したとして647万円の逸失利益及び慰謝料600万円は裁判所も認めるところだが、野犬による事故が多発していた場所でもあり、そんな小さい子供二人で買い物に出した保護者の監督に過失ありとして、千葉県に慰謝料など損害賠償合計200万円の支払いを命じた。

事故のあった現場は300世帯が居住する地域で、野犬による咬致死傷事故が多発しており、千葉県犬取締条例に定める通り、県が適切な野犬等捕獲義務を果たしておれば事故は防げたと県知事の作為義務違反を認め、国家賠償法1条による損害賠償責任を負うとされた。


(2B-7) 【東京地判昭47.7.15】 150万円
交配用の犬を飼っている業者が、小型犬(Pomeranian、雄)を散歩させていたところ、見通しの悪い交差点付近で約7m離れたところに秋田犬(生後1才2ヶ月、40kg)を発見、足先30cm前にいた小型犬を急いで抱きかかえようとしたが、秋田犬に咬まれて即死した。飼主は秋田犬にリードをつけて散歩していたが、制御できなかった。この小型犬は、繁殖業者が交配用として60万円で輸入したもので、年間交配料収入150万円を稼ぐ金の卵。裁判所は業者に対して「他犬との不意の接触、自動車事故等を避けるため、犬を引率者の前に出さず、予め安全を確かめるべきであり、危険から守るため即座に犬を抱きかかえる等の避難体制をとれるようにしなければならない」と、小型犬を散歩させていた者の過失割合を3割と認定し、逸失利益は約218万円と計算されるので、秋田犬の飼主が支払うべき金額を150万円とした。


(2B-8)【名古屋地判平18.3.15】 67万円
名古屋市内の歩道をリードをつけて散歩させていた小型犬(miniature Dachshund、5才)に、鎖から外れて敷地外に出た中型犬(雑種、3才半)が咬みつき、殺してしまった。加害犬の飼主女性(77才)は、普通は自宅敷地内で放し飼いにしており、この日は、たまたま散歩に連れ出すため鎖をつけようとしていたところ、飼主の手をかいくぐって犬が敷地外に逃走、本件事件を起こしたものだった。被害者女性は、首や腹部に咬みつかれた被害犬をかばおうと止めに入ったところ、転倒し、顔面等を道路に打ちつけ顔面挫傷、左右指咬創、右ひざ挫創等で加療2週間の傷害を負った。被害者夫婦とその子3人が、加害犬の飼主に損害賠償として、家族の大切な一員である飼い犬を、無残にも咬み殺された精神的苦痛に対する家族3人の慰謝料130万円を含め、総額181万円を裁判で請求した。法律上「物」である犬の死亡に伴う慰謝料はありえないと主張する加害犬の飼主に対し、裁判官は、我が子同様に溺愛していた愛犬を突然咬み殺されたことによる慰謝料は認められるとし、3人に慰謝料50万円、ほかに、飼犬の火葬代、散歩させていて傷害を受けた妻の治療費などとして17万円、合計67万円の支払いを命じる判決を下した。

裁判で、加害犬の飼主女性は、相当の注意を払って犬を飼っていたから免責だと主張したが、裁判官は、77才の女性が中型犬が自分の手を潜り抜けるような事態が発生しても、犬が自宅敷地内から外に出ないよう注意を払わなければならず、犬が自宅敷地外に出たということは注意が足りなかったと指摘し、飼主の過失(注意義務違反)を認めた。少子高齢化時代、ペットは家族の一員であり、ペットをなくした飼主家族の精神的苦痛は、慰謝料をもって償うのが相当であるとされた


(2B-9) 【東京地判平29.12.12】 33.5万円
小型犬(miniature Dachshund、12才、体重6.5kg)を、飼主が路上で散歩させていたところ、中型犬が、リードから離れて突然一方的に小型犬に襲い掛かってその腹部に咬みつき死亡させた。突然飼犬を失った飼主夫婦とその10才の子3人が、加害犬の飼主に対し慰謝料など損害賠償を請求した事件。加害犬の飼主は咬まれた犬の治療費4万1391円及び火葬費合計9万円ほどを払いこれで済まそうとしたが、咬み殺された犬の評価額や飼主家族の被った精神的苦痛に対する慰謝料をどうするか裁判になった。亡くなった犬は12年前15.8万円で買ったものであり、余命3.5年として比例計算、35,677円と算定された。第一審東京簡裁判決は、散歩させていた飼主(父親)のみの慰謝料を5万円と認めたが、家族(母親+子)の精神的苦痛に対する慰謝料は法的保護に値しないと認められなかったため、納得いかない飼主家族が控訴し、第二審地裁判決では、家族である母親と子にも各5万円の慰謝料を認めるのが相当であるとなった。小さな犬を連れている者は、大きな犬が向かってくるのを見たら抱き上げるなりして防衛できるはずであり、咬み殺された犬の飼主にも過失があると加害犬側は主張したが、事故は一瞬のうちに起きており、被害者側に過失はない、すべての過失は加害犬のリードを外した飼主にあると判断された。結局、加害者側は先に支払った約9万円に加えて、飼主の休業損害などを含め、追加で約24.5万円の損害を賠償せよとなった。


(2B-10) 【東京高判昭36.9.11】 30万円
友人のBoxer犬(3才)を勝手に散歩に連れ出し、東京都内の土手で遊ばせていたところ、たまたま放し飼いしていた他の犬と突然咬み合いの喧嘩になり、負傷して肺気腫症を起し、それが原因で死亡した、として、飼主に損害賠償を請求された。仔犬として5万円で買い受けたものだが、日本警備犬協会・全日本畜犬登録協会より家庭犬中等訓練試験合格証(総評優)を授与され、又国際畜犬連盟主催の愛犬綜合大展覧会において優秀犬として受賞された犬で、少なくとも27万円の価値はあると判定され、更に飼主の慰謝料として3万円、合計30万円の損害賠償が命じられた。いくら友人でも、無断で他人所有の犬を引出し、しかもその危害防止のため万全の手段を講じなかったことに過失があり、責任は免れないとされた。(原審は東京地裁)


(2B-11)【大阪地判平27.2.6】 23万円
小型犬(Chihuahua、15才)を散歩させていたところ、大型犬(Shepherd)を飼育している経営者の店舗前において、突然、飼主の不充分な管理により逃げ出した大型犬が小型犬に突進して接触し、同小型犬がショックによる心不全により死亡したため、小型犬の飼主が民法718条に基づき、計58万円の損害賠償を請求した事案。大型犬の飼主は、被害犬の飼主が訴訟に及ぶと、うちの犬は事故当日その時間に逃げ出していない、もともと小型犬にぶつかったこと自体立証されていないと居直り、損害賠償の責任はないと主張した。被害犬の飼主が獣医の診断書などを裁判資料として提出、この大型犬は、事故の数日前にも逃げ出していたことを警察が確認しており、状況証拠から、裁判官は加害犬飼主の責任を認めた。裁判では、小型犬の葬儀費用、弁護士相談費用のほか、慰謝料として18万円、合計23万円を被害犬飼主夫婦に支払えと命じた。


(2B-12)【大阪地判平21.2.12】 20万円
飼主にぴったりついて散歩していた飼い猫が、突然家の鎖から離れて路上に出た紀州犬(中型犬)に咬みつかれ、この猫が死んでしまった。飼犬は、普通は紐につないでいたが、金具が偶然付け根から抜け落ちたため、犬が離れてしまい、敷地外に出たのだった。猫は、飼主が、生まれて間もない子猫を知人から無償で譲り受けた雑種で、年齢18才。我が子のように愛情を注いで育ててきた猫を、目の前で咬み殺された飼主は、犬の飼主を訴え、慰謝料130万円を請求した。犬の飼主は、老齢の猫には財産的価値はなく、民法上の「物」を失ったことによる慰謝料は発生しないと主張、もともと、自分の家の前を猫に散歩させるなら、犬が敷地外に逃げるかもしれないから、猫に紐をつけて散歩させるべきであり、本件事故が起こった原因は、紐につながず猫を散歩させた猫の飼主にあるとの理論を展開、過失相殺されるべきだと主張した。

裁判官は、うちの犬が逃走するかもしれないから、近隣を通行するものは注意すべきであると主張するに等しい犬の飼主の言い分は受け入れられないと断じ、大阪府動物愛護管理条例§4が犬の放し飼いを禁じているのであるから、猫を咬み殺す事故を起こした犬の飼主の保管義務違反は不法行為に当たると判断した。確かに猫を放し飼いの状態で散歩させた飼主にも軽微な落ち度があるが、犬を敷地外に逃がした飼主の注意義務違反の程度のほうが著しいので、過失相殺は適当でないと、猫の飼主が蒙った精神的苦痛に対する慰謝料として20万円の支払いを命じた。


(2B-13)【春日井簡判平11.12.27】 19万円
飼主の母が近所の公園で小型犬(Pomeranian、当時8才)をリードにつないで散歩していたところ、大型犬1匹と中型犬2匹を同時に散歩させていた男性(当時66才)から、大型犬が小型犬めがけて飛びかかったため、男性はそのはずみでリードが手から外れ、小型犬はあっという間に左胸部を咬みつかれた。胸部咬傷が原因で胸郭内に膿がたまり、肺炎を併発してPomeranianは3日後に死亡した。加害犬の飼主は、咬みつかれた小型犬がまだ生きていたのでそのまま立ち去ったが、通りがかりの近所の女性が大型犬の飼主のことを知っていて、通報され、彼はやむなく、かみ殺された小型犬の治療・手術代+葬祭費用実費123,500円を支払った。納得いかない小型犬の飼主が裁判に訴えた内容は、治療・手術代+葬祭費用123,500円に加えて、犬の代金18万円及び慰謝料20万円、合計38万円を請求するというもの。裁判所は、老人が大型犬を含む3匹の犬を同時に散歩させるのは、犬の動作を充分制御できる体制をとっていなかったとして飼主の過失を認め、同時に被害犬の飼主に対して、今回の事故の3年前にも散歩中に別の犬に咬まれたことがあるのだから、小型犬の飼主は危険を避けるため抱きかかえるなどの行為を取るべき義務があったと認め、過失割合を加害犬側80%、被害犬側20%とした。裁判では犬の相場を8万円と認定、伴侶動物を失った慰謝料3万円と認め、それに治療・手術代実費を含めた合計233,500円を実際の損害額と認定、20%の過失割合を差し引き、加害犬側は186,800円を負担すべきとした。(123,500円は既に支払っていたので、判決により追加で払うべきは63,300円となる)


(2B-14) 【那覇地判平7.10.31】 禁固1年
闘犬愛好家の会の会員であった男が、自己の飼育していた闘犬(American Pit Bull Terrierオス)2頭(体重24kg及び32kg)を、口輪をはめないまま漫然と公衆の出入りする公園付近で放し飼いにし、その監守を怠った重大な過失により、公園で遊んでいた幼児2名を襲わせ、うち1名を即死させた事故。6才の女児が最初に襲われ、左大腿部を咬みつかれて、全治約1週間を要する傷害を負い、その子を救助しようとして走り寄った5才の女児に今度は2頭が頭部に咬みつき、その場から41m離れた雑木林内に引きずり込んで、2頭が女児の全身を交互に咬みつき即死させたもの。闘犬愛好家の間では、American Pit Bull Terrier種は、常時鎖でつないで飼うことが常識であったとされるのに、男は闘犬の管理としては、あまりに無神経で、幼い生命を奪った結果の重大性はもとより、遺族に与えた衝撃、近隣住民に及ぼした恐怖・不安感は測り知れず、被告人の刑事責任は極めて重大として、禁錮1年が言渡された。男が本件犯行を深く反省していること、被害者の遺族らに対し、全財産を投げ出して償うとの決意を表明しており(既に、一部慰謝の措置を講じている)、高齢であり、前科がないことなどを考慮して、重過失致死傷罪(刑法§211、5年以下の懲役)としては軽い禁錮1年の実刑で済んだ。