大阪・岸和田のアミ・インターナショナル 行政書士事務所                                  クーリング・オフ、国際法務、ペット法務はお任せ下さい。
  
  
(15A)ペットの交通事故判例

(15-1) 大阪地和解平28.3.8】 300万円
平成26年春、夜9時頃、大阪市内の商店や住宅が立ち並ぶ地域の路上で、リードを付けない飼犬(小型犬toy poodle)が自転車にぶつかり、乗っていた親子が転倒し、母親は左足骨折などの大けが、8才の娘は左足打撲のけがをした。母親は娘を習い事から迎えに行き、自転車後部の幼児用座席に座らせ、帰宅するところだった。若い男がいきなり飼犬を蹴り飛ばしたため、驚いた犬が自転車に向かって飛び出し、前輪に接触して、そのはずみで自転車が転倒し、2人が路上へ投げ出されたのだ。男は「犬を探してきます。また戻ってきます。後日謝罪したい。」と言い残して、逃走、母娘は病院に救急搬送された。男は、その後も謝罪も治療費の支払いもしなかったので母娘は、約450万円の損害賠償を求めて平成27年5月、大阪地裁に訴訟を起こした。

男はリードを装着していなかったことは認めたものの、「犬を蹴っていない、そもそも犬は自転車と接触していない」と主張と、逆に自転車のルール違反を指摘して居直った。母娘が夜間無灯火走行していたばかりか、二人乗りで定員オーバーの道交法違反というわけだ。大阪府道路交通規則で二人乗りが認められる幼児の年齢は6才未満。娘は当時8才だった。男は「自転車が適法な走行状態であれば、飼犬が突然飛び出したとしても、安全に停止させることが可能だった。転倒は違法な二人乗りが原因だ」と争った。確定的な認定判断は困難とのことで、結局、裁判所が和解を勧め、飼主側が母娘側に300万円を支払うことで決着した。


(15-2) 【名古屋地判平22.3.5】 294万円
盲導犬(身体障碍者補助犬法§2U)と共に横断歩道を横断していた男性が、事業用大型貨物自動車に衝突され、男性は入院1カ月の重傷、盲導犬(6才)は死亡した。男性はその後1年半ほど通院した後に症状固定、運送会社は、保険で約216万円の慰謝料などを支払ったが、財団法人中部盲導犬協会が男性に無償貸与していた盲導犬(Labrador Retriever)の価値がいくらか裁判で争われた。加害者側は死亡した犬の価値はせいぜい20万円と主張するも、裁判官は、盲導犬協会の資料から、盲導犬を育成する費用は1頭当たり453万円かかると算定、稼働期間10年として、残余期間等を考慮し、加害者側が負担すべき死亡した盲導犬の客観的価値を260万円と算定した。加害者会社及び運転手は、不法行為に基づく損害賠償として、他に盲導犬の火葬費用・弁護士費用などを含め、合計294万円の支払いを命じた。裁判で、交通事故に遭った盲導犬を、社会的価値のある能力を有するものとして評価するのが相当であると認められた。


(15-3) 【名古屋高判平20.9.30】 53万円
Labrador Retriever犬(7才)を同乗させていた飼主夫妻の普通乗用車が、赤信号で停車中に、牛乳輸送の大型貨物自動車に追突され、そのはずみで、飼主夫妻の乗用車も、更にその先で赤信号停車中の別の普通乗用車に追突した。この事故で、飼主夫妻は骨折等の障害を負ったが、後部座席に乗っていた愛犬も第二腰椎圧迫骨折に伴う後肢麻痺の重傷を負い、犬は生涯自力歩行できず、リハビリが必要になった。夫妻は犬の治療費として支払った145万円のほか、入院費(29万円)、通院・自宅付添看護費(228万円)など実費のほか、平均余命までの今後のリハビリ・通院・自宅付添看護費(246万円)、慰謝料(200万円)、弁護士費用(90万円)など合計990万円の損害賠償請求をした。一審はそのうち、186万円を認めたが、トラック運転手側が控訴し、名古屋高判平20.9.30は53万円に減額した。家族の一員であるかのように、飼主にとってかけがえのない存在になっている愛玩動物が、不法行為によって重傷を負ったことにより、死亡した場合に近い精神的苦痛を飼主が受けた時は、財産的損害に対する損害賠償のみならず,精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができると判示した。


(15-4) 【名古屋地判平22.3.5】 24.5万円
幹線道路上で普通乗用車が時速50kmで走行中、野良犬を追って走っている大型の飼犬(Rottweiler種、1.5才、体重約50kg)が急に飛び出し自動車の前方に衝突、犬は死亡したが、自動車の所有者が被害車の修理代30.6万円を請求した。飼主はもともと綱につないで散歩させていたが、偶然茂みに潜んでいた野良犬を見つけた飼犬を制御できず飼主が綱を放してしまった。30万円で購入した犬を失った飼主が自動車の運転者(=所有者)に対し愛犬を轢き殺された慰謝料50万円と共に合計80万円の損害賠償を請求し、一方の自動車所有者は修理代金を請求して、名古屋簡易裁判所では飼主側が運転者側に修理代金全額支払えと判決を出したので、飼主側が控訴したもの。名古屋地裁では、事故の過失として、犬の飼主側には犬を管理不能な状態にならぬよう綱をしっかり持つ注意義務があったにもかかわらず綱を外してしまった過失があり、一方の運転者側には、前方約1〜2mを走っていた野良犬には衝突せず、すぐ後を追っている飼犬に時速約50kmで衝突しているから、前方を注意して飼犬に危害を加えないよう、減速等の措置を講じる一般的な注意義務があったのに減速しなかった過失があるとして、飼主側80%、自動車側20%の過失割合を認めた。その結果、判決は、飼主に対し、自動車の修理代金約24.5万円の損害賠償を命じた。


(15-5) 【大阪地判平27.8.25】 12.6万円
夫婦の乗用車が停止しているところに、同じく乗用車が追突した事故により、被害者車両に同乗していた飼犬(toy poodle、体重4kg)が傷害を負い、この犬の所有者である夫婦に損害が生じたとして、追突した加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した。夫婦も後遺障害第14級の傷害を負ったが、任意保険がカバーしない飼犬のMRI検査費用(10.2万円)及び交通費(1.6万円)ほか、飼犬が傷害を負ったことに対する飼主の慰謝料などを請求したものの、裁判ではMRI検査費用及び交通費のみが今回の交通事故との相当因果関係のある損害と認定され、飼主の損害は約14万円と算定された。但し、追突のはずみで後部座席の犬がカーナビに衝突したのは、ペット用のシートベルトを装着していなかった過失があるとして飼主の過失割合を1割と判定、判決では12.6万円の支払を加害者に命じた。


(15-6) 【東京高判平20.9.30】 7.7万円
犬を散歩させていた歩行者(63才、主婦兼パートタイマー)に酒気帯び居眠り運転の乗用車が突っ込み、女性と犬は即死、被害者の夫と二人の子が加害者の運転手に損害賠償を請求した。無謀運転の運転手は、業務上過失致死罪等で懲役1年の実刑判決、服役中に死亡したため、損害賠償の責任は運転手の両親に承継されたが、裁判中に父親も死亡したので、結局、母親と子二人(運転手の兄弟)が損害賠償責任を負う羽目になった。東京高裁は遺族の損害額を4,979万円と認定し、そのうち自賠責で2,143万円支払われているので、差額2,836万円の支払いを加害側家族に命じた。即死した犬について、亡くなった被害者の夫に慰謝料として5万円、犬の火葬料として27,000円が認められた。不慮の事故で命を落とした犬にも、火葬される権利があると認めた判決だ。


(15-7) 【東京地判昭40.11.26】 5万円
昭和39年4月午後7:40p.m.頃、東京都大田区路上において、犬(Dachshund)の飼主の従業員女性が犬を散歩させ、道路を横断しようとしていたところ、突然右側から進行してきたタクシーに犬の頭部が接触し死亡した。この時、運転手は一瞬振り向いて徐行したがそのまま走り去った。しかし、目撃した通行人が車のナンバーをひかえて女性に渡したので、警察に通報され、彼は警察の取り調べを受けることとなった。運転手は特定できたものの、いくら話してもらちが明かないので、飼主はタクシー会社と運転手を相手に、犬の時価20万円と慰謝料5万円、合計25万円の損害賠償請求訴訟を起こした。証人として出廷した運転手は「犬と接触した覚えはない」などといい、本訴請求は全く理由のない言いがかりだと主張したが、他の証人の証言と対比しても不自然で信じるに足りないと採用されなかった。それどころか、彼は「全然犬に気づかなかった」と主張したのだが、その点において既に過失があると裁判官に指摘された。但し、公道で飼犬の安全を確保すべき主たる責任はその保管者の側が負うのが原則だとして、飼主側の過失を7割としたから、時価10万円と評価された犬の価値を3万円、慰謝料2万円として、合計5万円の損害賠償をタクシー会社側に命じた。